梅雨寒や胸かけ一枚石地蔵 栗本佳代子
梅雨時には、急に冷たい風が吹いたりしてぐっと気温が下がり、日の気が欲しいと思ったりするほどの日があります。これはオホーツク方面からの高気圧が強すぎて日差しがさえぎられるからだと言われています。
地蔵菩薩は、日本では平安時代から盛んに信心されるようになりましたが、この句の場合は、子安地蔵ででもありましょうか……。ニコニコとまことに柔和なお顔で、一般には左手に宝珠、右手には錫杖をお持ちです。
そのお地蔵様が、赤ちゃんのよだれかけのような胸当てをつけてお立ちになっているのは、おそらく大都会の路地のような所ではなく、小さな村や町の四つ辻ではないでしょうか……。胸当ての色はきっと赤でありましょう……。信心篤いおとしよりが、自分で縫ったものを、三カ月に一度位の割合で取り替えて差し上げているので、それほど汚れてはいないのでしょう……。
お地蔵様の笑顔は、梅雨寒で心なしかいつもより淋しそうに見えます。そのオツムリにとんぼが翅を休めるような、いい陽気に早くなってほしいものです。
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