日光に替る月光掛大根 神谷 波
<掛け大根><干大根><大根干す>など……、これらは初冬の季語となっています。
さて十本ぐらいずつの束にして軒先などに干されている大根。
昼間はこの季節の柔らかい太陽の光を浴びていますが、夜になっても家の中に蔵(しま)われるわけではありません、外に出したままです。そして、太陽に替って今度は月の光を浴びるのです。
大根の肌を照らす月光は蒼白く艶かしく、どことなくもの淋しく、夜のしじまの中で生き物のように浮び上がり、閑かな田園の昼間がちらとも見せない妖しさにはっとするようなこともあります。
そのような繰り返しののちにやがて干大根はおいしい漬物になるのです。
カキクケコの音(おん)の連続が、ある特別な情緒を醸し出してはいないでしょうか……。
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