ためらひの紅をほのかに返り花 居升 白炎
<狂い咲き><二度咲き><忘れ花>などとも呼ばれる帰り花は、桜、山咲、つつじなどが、十一月頃の小春日和に、時ならぬ花を咲かせるとことをいい、<凩に匂ひやつけし帰花>という芭蕉の有名の句もあります。
時ならぬときに花をひらくのですから、花自身にも、さて咲いていいものやら……といった躊躇いがきっとあるに違いありません。
その躊躇いはある種の含羞い(はじらい)に似通っています。帰り花の花の色に、紅色がほんのり浮かんでいるのはそのためです。
品がよくて、それでいて度を越さず艶っぽく、淡い色彩の日本画のような……。
当マイクロフォンの貧しい詩心では、言葉にうまく言い現すことができませんが、まことに魅力的な一句かと存じます。
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