地吹雪の矢面に立ち辻仏 加藤渓谷
積もった雪を捲き上げて吹く冷たく強い風……。
北国はまだひっそり雪の中、春は遠いことでしょう。
空漠として拡がる白一色の雪野原の辻に、これもすっぽりと雪に埋もれて、石の仏様が立っています。
人々は赤々と燃えるストーヴ、家の中で生活しているのに、石の仏様は地吹雪の矢面に立って、さむともつらいとも、早く春になってほしいなぁ、ともおっしゃらずに、慈悲を湛えたお顔をいつものままに、その村全体の人々の朝夕の暮しを優しく見守ってくださるかのようです。
餌をもとめて鴉が啼いているかもしれません。
洟(はなみず)を手でこすって、年老った村人のひとりが仏様の前を通りかかり、お頭やお顔の雪を丁寧に払ったかもしれません。
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