雪女郎立ちゐし跡か土間の濡れ 伊藤トキノ
<雪女郎>は別名<雪女>、<雪鬼>、<雪の精>……。
雪国の幻想で、雪の夜に人を迷わすものといわれています。
人の気配を全く感じない、うそ寒く、物音一つしない静寂。
おそらく夕昏れ、外は雪。
ふと見るともなしに見れば土間の一ヶ所が黒々と濡れています。
<ちっとも気づかなかったけれど、いつの間にか誰か歸ってきたのかしら……、誰も歸ってきてない筈だけど……>
そこまで自問自答して、
<そうだ!! 雪女郎かしら……>
急に怖ろしくなりました。
幻想の美しさ、濡れた土間の小さな面積が、その形が目に見えるようです。
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