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濃き色の服選る秋の旅描き 山本つぼみ
<季(とき)は秋だわ。どこか静かな山間いにでも旅をしたいわ……>と、まだ見ぬ土地への夢を描いています。<どういう色の洋服を着て行こうかしら。……淡い色のものより、ちょっと濃い色の洋服の方がいいわね>と、ひとり心の内に自問自答して、洋品店の店先で洋服を選んでいるのでもありましょうか……。
切手買ひに出て初秋の袖たもと 竹内まさを
和服を着て郵便局に切手を買いに行きました。秋と郵便局と切手……、なんともいえずその取り合わせが、この“季節”という感じがいたしますね!?「ええと、どこだったかな……」などと呟いて、小銭を袂からだして支払ったのかも知れません。和服はまだちょっと樟脳(しょうのう)の匂いがしているかも知れません。
露天湯の肌すぐ乾く鰯雲 西本一都
久々にやってきた山峡(やまあい)の、ひなびた温泉……その露天風呂。「いささかぬるい湯だが、いいねぇ!!一体何年ぶりだろう……。ありがたいことだなぁ生きているっていうのは……。上乗の秋晴れだなぁ……。お湯から出でこうして座っていると、すぐに肌が乾くよ。それだけ空気が爽やかなんだねぇ!!ごらんよ、なぁ綺麗な鰯雲だ。お前さんも健康にきをつけて、わしと一緒に精々長生きしようじゃないか、なぁ……」
胸におく貝のつめたさ夏終る 山本つぼみ
胸に置くものを夏の浜辺で拾いました。貝殻であっても、またそうでなく、空想の貝殻であっても、それはどちらでもよいと思います。要するに炎暑の夏が終って、爽やかな、涼しい秋が訪れ、歳月の流れに寄せる、なにがなし淋しい、それでいてひんやりとした、ほっとした感じが<貝のつめたさ>なのでしょう。女心の優しさを、目の前に、<はい、これです……>と差し出されたようないい句で、当マイクロフォンが愛唱してやまないものでございます。
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