汚れなき世が噴水の向こう側 速水直子
秋には淋しすぎ、冬には寒々としてむしろ疎ましく、今の季節にこそ相応しいのが噴水でありましょう。
陽の光をはじきながら、勢いよく水を噴き上げてるその噴水のこちら側は、虚実入り乱れた現実の世の中。
そして精々五十糎か一米の水の向こう側が、汚れのない美しい世の中……。つまり憧れのロマンの世界。そここそが誰にも邪魔されず、侵されず、安住していられる、ただ独りの、美的で快適な心の小宇宙なのです……。陽炎の揺れ立つ風景と同じように……。
詩心(うたごころ)とは何かを明瞭に理解している作者のこの句に、当マイクロフォンを震えるようなつよい感動を覚えます。
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