盛装の果てのあくびや七五三 松倉 絹江
この十五日は七五三でした。早いもので、暦の上ではすでに立冬を過ぎているのですから、当然ながら<七五三>は冬の季語です。
女子は三歳と七歳、また男子は三歳と五歳。……その成長のつつがなさを祈るこの祝いの行事は、いまでも、多くは数え年で行われているようです。
昔は女の子は振り袖、男の子は袴と決まっていたものですが、現在では親の好みも大幅に加わって服装もさまざま。まァいずれにしても、可愛いわが子を精一杯飾り立てたいのは、人情の自然というものでありましょう……。
この句、<盛装>ということですから、おそらく登場人物は女の子で振り袖。母親は月々の家計の中から貯金をして、この日のための用意をしていたことでありましょう。そうした親心を幼い子供が知り由もありません。
「さあ、出来上がったわよ。筥迫(はこせこ)も胸に挟んだし、お化粧もしたし、……ヨシ子ちゃん、奇麗になったわよ……まるでお嫁さんになったみたい」と母親は長時間の支度の後の大はしゃぎなのに、子供は、お宮参りをする以前に疲れてしまって大あくび……。
いささかムッとした、お母さん、「いやあ子のこったら……張り合いがないわネ!!」と思わず口走ったのかもしれません。
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