隠れん坊の鬼の影伸び夕焼けぬ 山田 静江
<おもいだすのは かくれんぼ 待てどくらせど来ぬ鬼に 淋しい納屋の櫺子(れんじ)から そっと覗けば裏庭の 柿の木にいた みそさざい>……これは大正十年、雑誌「赤い鳥」に載った西条八十の<かくれんぼ>という童謡です。
その<かくれんぼ>は当マイクロフォンを含めて、遊び道具の少なかった遠い昔に幼い日を過ごした世代の人々には、ある種のもの哀しい郷愁を伴って思い出されます。ものにも人にも、似合い釣り合いというものがありますが、そう言えばこの句のように<かくれんぼ>に<夕焼け>はぴったりです。ここはごみごみした都会ではなく、おそらく田園地帯でありましょう……。したがって、隠れる場所も、木の陰、石の蔭、小屋の蔭のほかはあまりなく、「もういいかい?」と、可愛い声をあげている鬼にとっては、「まーだだよ」と散らばってゆく子は割合見つけ易いのではないかと想像されたりします。
鬼の番になった子の影を夕焼けが次第に長くしてゆく時刻……。「いつまで遊んでるのよォー、もう御飯よォー」とお母さんがそろそろ迎えにくることでしょう……。
最近のコメント