蠅叩探さぬ妻にいらだつも 白岩三郎
齢(とし)とった御主人が齢とった奥さんに言いました。
「蠅が飛んでるじゃないか、一匹、大きいのが……。
わたしが蠅が大嫌いなことは、お前さん知ってるじゃないか!!
早く蠅叩きを持ってきなさいよ。
いま持ってくるか、いま持ってくるかと、いらいらしてたんだが、お前は相変わらずのんびりしてるねぇ。
こういうことが気にならないのかねぇ!?
わたしとは全く性格がちがうんだから……。
これで何十年と、よく夫婦として生活してきたもんだな……。
少しはお前さん、神経質になりなさいよ。
もういまからじゃ遅いかねぇ、齢(とし)だからねぇ。
全くやんなっちゃうなあ……」
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