わが家さへ逃れたきとききりぎりす 大野林火
帰るという世にうとましきことのあり
夜更けて今日もとぼとぼ帰る
という若山牧水の短歌があります。
男の身勝手、と言われそうですが、男には家庭という小さな城が、とくにこれといった 理由もなしにほとほと厭になる時があります。
ああ誰にも煩わされずに、ひとりき気儘な旅にでも出たい、と心底想う時があります。
この俳句もそうした気持を詠ったものでしょう。
どこかへ行ってしまいたいと思った時、それを想い止まらせるかのように、きりぎりすが鳴いたのでしょう。
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