五十路過ぐ一尾の秋刀魚あますさへ 沢田弦四朗
「あなた、またお残しになりましたね?
あたしは猫も振り向かない程に、この秋刀魚、二匹も食べてしまいましたのよ。
あなた一匹でもそんなに残して、食欲がありませんのねぇ!!」
「いいじゃないか、わたしはもう五十を越してるんだよ。
そんなにいっぱい食べられないよ。
わたしが昔から小食なのは、君、知ってるだろう!?」
「あら、あたしだってあなたとそんなに齢はかわらないでしょ!?
そんなおっしゃり方すると、あたしがいかにも食欲の権化みたいですね。
皮肉に響きますわよ!!」
「いやいや、そんな意味じゃないよ……」
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