土手下へころがる遊びつくしんぼ 黒崎 幸子
映画<男はつらいよ>には土手の場面がよくでてまいります。なぜかしら土手というものは大人の郷愁を誘い、子供の憧れを呼び、人間の優しさ淋しさにどこかで繁っているかのような気がします。それは川という、流れて帰らぬもののはかなさのイメージと同居しているからかも知れません。だから余計に愛(いとお)しいのかも知れません。
あの遊びがなんという名で子供達に呼ばれていたかは忘れましたが、つくしんぼが可愛い頭を擡(もた)げた土手の斜面を昔の子供達は好んで転り落ち、その遊びを飽くことなく繰り返したものでした。「ほらほら洋服がゴミだらけじゃないの!!」……母親の甲高い声をよそに夢中になって転がっていた少年時代……。
転がるたびごとに、眼の中に大きな蒼空は万華鏡のように映っていたものでしたが……。
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