触れ合はず争はず夜の牡丹雪 山口 速
牡丹の花のように、雪の一片(ひとひら)々々が大きい牡丹雪は淡雪とも謂い、すぐに溶けてしまう春の雪……。
それが遠い天の彼方からゆっくりゆっくりと落ちてきます。
数えきれないほどの一つ一つの雪は、お互い同士触れ合うようでいて触れ合わず、競争して落ちてくるかのように見えていて、けっして争ってなんかいません。
不即不離、つかずはなれずの均衡をそっと保ちながら、美しく優しい世界を形づくっています。
人間はどうでしょうか……、仲々こうはいきません。密着し過ぎてかえって仲がまずくなったり、むきだしの闘争心でぎくしゃくと荒々しい関係になったり……。
悠々と落下する夜の牡丹雪に教えられる深く切なるもの、……いかばかりか、測りしれません。
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