扁額の文字隆々と夏初め 伊藤トキノ
<扁額>というのは門や室内にかける細長い額のことですが、当マイクロフォンの独断と偏見に充ちた想像では、この句の<扁額>は、お寺の山門に懸かっているようなものではないかと思います。
夏の初めは、天地自然の万物がまさに隆々と<いのち>旺盛な時期。光眩ゆき青葉、若葉に囲まれたお寺の扁額の墨の文字もまた、年古りてもなお墨痕鮮やかに、それこそ隆々と盛り上がっているのでありましょう。闊達にして明朗、豪快にして精気充ち希望に溢れ、一点の曇りも感じられません。
「明日という日は明るい日と書くのよ」
どこからかそんな歌声が聞こえてくるような気さえいたします。
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