手をつなぐ夕焼け岬老いふたり 三浦 里美
夕焼けはどの季節にも見られますが、俳句の世界では単に<夕焼>……と言えば、それがもっとも壮大で美しい夏の季語となっています。
さてこの俳句の夕焼け岬とは、そういう名前の岬がある訳でなく、どこのと限定せずでも、ある岬の見はるかす上空いっぱいに、また視線の届く限り夕焼けが真っ赤なのでありましょう。眼下に拡がる海は、その光を受けて美しい発光体のように輝いています。その岬に今も立っているのは、おそらく老人夫婦でありましょう。見事な光景に、二人とも圧倒されんばかりの感動を覚えつつも、高い所に立っているので、言わずもがな老妻は女の身……、恐れおののく気落ちもあって、思わず知らずにご主人の手を握っているのでありましょう……。
烈しかった夫婦の愛憎は遠くに去りました。どちらからともなく言い出して出かけてきた静かな旅の数日……。夕焼けの岬に立って、いま二人の胸に去来するのは、どんな想いでありましょうか……。
コメント