草笛やなく母の顔、子にふしぎ 伊藤みちこ
「これはね草笛といって、いい音がするんだよ。
おかあちゃん、やってみようか!?
……ほら、いい音がしたでしょ、一郎もやってみるかい!?
唇を切らないように注意してね」
「ねぇ、おかあちゃん、どうしたの? どうして泣いてるの?
おかあちゃんが泣いちゃ、僕厭だよ。
僕も泣きたくなっちゃうもん……」
「ごめんね、一郎。……一郎が大きくなったらきっとわかるよ。
でもねぇ、男と女っていうのは、どうしようもないもんでねぇ……。
人間には男と女しかいないのに、うまくいかないのよね……。
さあ、おかあちゃん、もう一度草笛吹いてみようかな……」
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