柿むいて他郷にありぬ波は恋し 永島理江子
形よく艶々と色よい大ぶりの柿を、丁寧にナイフで皮を剥いて、
これから食べようというところです。
そして途端にわれ知れず胸が熱くなりました。
<いま頃、かあさんどうしているかしら……>
と、急に想ったからです。
母を残し娘は嫁いでよその土地に住んでいるのか。
或はひとり旅に出て旅籠の一部屋にでもいるのか。
また或は事情があって、故里以外のところで働いているのか。
その辺はどうでもいいことでしょうが、柿の皮を剥いてすら、
<おかあさん!!>
と恋しさ募るのは、人の子の美しい人情でしょう。
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