仔を呼べば親犬が来て日の永き 山代あづさ
俳句の世界では<日永>は春、<夜長>は秋と定められています。
理屈の上からは春も秋も昼の長さはほとんど変らず、昼がもっとも長いのは夏であるはずですが、冬の短日の後夏の短夜の後では、日永、夜長の喜びはひとしおだからです。
作者は親仔の犬を飼っています。それを連れて、散歩がてら近くの土堤にでもでかけたのでありましょう……。それこそ、手の舞い足の踏むところを知らず……といった有り様で、駆けては止まり、止まっては駆け、……やがて疲れたのかその動きも緩慢になりました。
やや離れた所でそれを見ている作者は仔犬の名前を呼びました。すると、手元に来たのは親犬の方です。
「あんたじゃないのよ。あたしが呼んだのは……、親が子より甘えちゃ、ダメじゃないの……。あんたはお母さんだよ、……」などどその頭を撫で、誰に話かけるでもなく、<ホントに日が永くなったわ……>と呟けば、<結構な陽気でなによりです……>と言わんばかりに、犬は作者の顔をじっと見つめたことでありましょう……。
コメント