只でさえ日々ボケーとしているわたくし。
その3倍はボケーとしながら観ていたシリーズ第47作 「男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」(1994年)。
このころすでに渥美清さんは肺がんを患っており、ドクターストップを振り切っての出演だそうですから、笑うに笑い得ない、まさに「男はつらいよ」なのですが。
その中のワンカット。正月休みでしょうか、いつまでも可愛くて素敵な倍賞千恵子さん演じる寅次郎の妹さくらの旦那ひろしが家から出かけるとき、さくらが一言。
「楽しんでらっしゃい!」
ふと思うとオフクロにも嫁さんにも言われたことないんです、「楽しんでらっしゃい!」って。
オフクロには小学生の時、出かけるときには、やれ、あれは食べちゃだめだ!早く帰って来い!車に気を付けろ!と注意ばかり…。
嫁さんには“自分ばっかり好きなことやって…!”と無言の視線。
「楽しんでらっしゃい!」なんて言われたら、穿ってとって「悪かったな!」と言ってしまうでしょう。
でも映画のように本当に「楽しんでらっしゃい!」って言われたら、絶対に「あいよ!土産は何がいい?」って言ってしまうような。
日本人の心から消えてしまった「楽しんでらっしゃい!」。
山田洋次監督もそれを分っていていてあえてこのシーンを撮ったように思えます。
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